
賠償保障 1億円
先日、世田谷区の企業にフルハーネス特別教育に行った時の話。
会社の担当者は、いないようで受講される方々の代表者さんとのご挨拶でした。
何となく変わっているなと感じながらも、講習を開始したのですが、15名の受講者達は、あまりフルハーネスに興味がないようです。
1時間ほど講習を進め休憩時に、
「一般住宅の屋根に登って、エアコンの室外機を取り付けるのだけれども、
親綱を張る場所がないから、胴ベル型安全帯(墜落制止用器具)使っていない。」と言われまして、
「だめですよ、事故でも起きたら大変じゃないですか!
今の時代、死亡災害など起こしたら企業は、賠償保障で1億円以上かかりますよ!」って話を・・・・。
墜落災害が減らないからフルハーネス化が法的になったことを、伝えたかったのですが、彼らの目つきが急に変わったのですよ!
一人親方労災保険の対象外
「○○会社さんは、今日みたいに従業員に安全教育をしないのですか?」
Aさん「うちら下請で工事やっているので。」
「いやいや、下請だろうと○○会社さんから安全の教育や指導はないのですか?現場で注意されないのですか?」
Aさん「仕事の連絡があって、私たちが直接エンドユーザーのご自宅等で作業しますから、○○会社さんは、誰も来ませんよ」
「皆さんは下請会社さんの方々ですか?」
Aさん「はいそうです。ここに居る殆どが一人で仕事やっています。」
「ということは、ちょっと待ってください、殆どの方が一人親方なのですか。」
※あまり詳しく会社の形態をここでは、書きませんが、
大型家電量販店が○○会社(建設業界ではありません)にエアコンの据付工事を発注し、○○会社から彼らに仕事の依頼をするそうです。
「では、もし災害あったら○○会社さんの労災を使えないじゃないですか?」
Aさん「まぁ~怪我はしませんから。怪我しても自分で治療します。」
「○○会社に事故の報告をしないのですか?」
Bさん「怪我だ、なんだかんだって言ったら仕事切られちゃいますよ。」
そんな50年以上前の建設業界ではあるまいし、災害発生を下請に・・・・
信じられませんでした。
まさに「怪我と弁当手前持ち」って事ですよ!多角経営と言いますか、異業種の仕事を行うことに不満も不平などありませんが、酷い話です。
安全管理など何も考えていないのか?或いは、知らないのか?
わざと触れずに、下請さんにお任せなのか?
労災特別加入制度
そこで、労災の仕組みと一人親方(自らも仕事をし、社員を雇っている事業主も含む)が、入れる労災特別加入制度(注1)の内容を説明しました。
簡単に説明しますと、労災(労働保険)とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やそのご遺族のために、必要な保険給付を行う制度のことです。ということは、労働者が対象であって、事業主や一人親方は労災の対象外で、怪我しても或いは死亡災害であっても、労災保険が使えないということです。※労災については、今後細かく説明しますね!
労災特別加入制度に加入すれば工事中に怪我や死亡しても労災から医療費も休業補償も支給があります。勿論、死亡災害などでは、ご遺族に対して給付します。
労災特別加入は、労基署で各自が申請することが出来ず、
労働保険組合加入(注2)からの申請です。
全国に建設業に携わる方は、約500万人いて、
その内一人親方が約80万人もいらっしゃるそうです。
現在の建設業を担っている一人親方の存在は、とてつもなく大きいものと思いますが、この制度をご存じない、知っていてもどうしたらよいかわからないと思っている一人親方や、一人親方に仕事を発注する企業が労災を解っていない事があるのですね。正直吃驚しました。
彼らに、作業手順書だ、リスクアセスメントなんて言っても理解されないだろうと本当に心配してしまいました。
よく聞く話に、「会社辞めて、独立して仕事している」って職人さんがいるのですが、労災のこととか大丈夫かな?健康保険とかちゃんと加入しているのかと不安になります。きっと私が歳を取ったからなのか心配です。
起業される方が沢山いて日本が活発になっていかなければ、このコロナ禍による不景気を打開しないとも思うのですがね・・・・
その後、受講者さんたちが、現状の危険さに少しだけれども気が付いていただけたのか、講習を皆さん真剣に聴講されていました。

まとめ
講習終了後、「私の名刺をお渡しします。今日聴いたことで分からないこと、
災害等で相談する方がいない時等には、メールでも電話でも構いません
私で出来ることなら協力しますし、アドバイスをしますよ。お金などいりません、だって皆さんは、私の大切な仲間だから。」と伝えました。
その日の夜、何人かの受講生からメールを頂きました。
「講義を聴いて、改めていろいろと考えるキッカケになり、貴重な一日になった。
困った特に相談したい。」
「考え違いをしていた、やはり自分の命は、自ら守らなければ、もっと家族のことを考えなければいけないことに気づいた。」
「ほかの講習を受けたい」等々のメールを頂きました。
通常は、受講者一人ひとりに名刺を渡さないのですが、凄く心配になってしまったのは、もしかしたらこのブログを始めて、私自身が何故安全衛生の講師を目指したのかを思い出したからかもしれません。
コメント欄にて色々と質問など書き込んで頂けると幸いです。
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一緒に安全作業を楽しみましょう。
安全を好きになって下さい!
2022年2月4日 ブログ管理人:Autumn leaves (紅葉)
『怪我と弁当手前持ち』って知っていますか?
参考資料
(注1)労災特別加入制度
特別加入制度とは何ですか。|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
Q.特別加入制度とは何ですか。
A.特別加入制度とは、労働者以外の方のうち、業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度です。特別加入できる方の範囲は、中小事業主等・一人親方等・特定作業従事者・海外派遣者の4種に大別されます。
労災保険は、日本国内で労働者として事業主に雇用され賃金を受けている方を対象としています。そのため、事業主・自営業主・家族従業者など労働者以外の方は労災保険の対象にならず、業務により負傷した場合などでも労災保険給付を受けることは出来ません。しかし、例えば中小事業の場合、事業主は労働者とともに労働者と同様の業務に従事する場合が多いこと、また、建設の事業などの自営業者は、いわゆる一人親方として、労働者を雇わずに自分自身で業務に従事するため、これらの方の業務の実態は労働者と変わらないことから、労働者に準じて保護することを目的としています。
また、労災保険法の適用については、法律の一般原則として属地主義がとられていますので、海外の事業場に所属し、その事業場の指揮命令に従って業務を行う海外派遣者に関しては、日本の労災保険法の適用はありません。しかし、諸外国の中には、労災補償制度が整備されていなかったり、仮にこうした労災補償制度があったとしても、日本の労災保険給付の水準より低く、また、給付内容がまちまちで、日本国内で労災を被った場合には当然受けられるような保険給付が受けられないことがありますので、海外での労災に対する補償対策として設けられています。
なお、家族従事者は事業主と同居及び生計を一にするものであり、原則として労働基準法上の労働者には該当しません。しかし、事業主が同居の親族以外の労働者を使用し、業務を行う際に、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること、また、就労形態が当該事業場の他の労働者と同様であれば、家族従事者であっても労働者として見なされる場合があります。
(労災補償部補償課)
(注2) 労災保険事務組合加入
労働保険事務組合とは、厚生労働大臣から労働保険事務処理を行うことを認可された、中小事業主等の団体です。
事業主が事務組合に事務処理委託を取り交わすことにより、労働保険の成立や従業員の入退社及び労働保険料の確定申告に関する手続きなどが事務組合で行なわれることとなり、事業主は煩雑な労働保険事務処理についての簡素化が図られます。
また、本来労災保険に加入することができない事業主(代表者以外の取締役の方についても)も労災保険の特別加入制度を利用して労災保険に加入することができることとなります。
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