- 初めて見たフルハーネス
- 墜落実験
- 文句の嵐
- まとめ
初めて見たフルハーネス
三十数年前、ヨーロッパへ建設現場の視察に行った時、初めて作業員がフルハーネスを着装して作業を行っているのを見ました。その時は、ヨーロッパ(フランス)の作業員は、肩に背負う安全帯を使うのか?位しか気にしていませんでした。それから、5~6年後に私の現場で鉄骨の建て方をお願いした二次下請けの鳶さんたちが、全員フルハーネス着装で作業を行ったのです。
その時、日本でもフルハーネスを使う作業員がいるのかと・・・・
そこへ、二次下請け会社の社長さんがみえて、
「社長さん、フルハーネスをヨーロッパで見ましたけど、日本人が現場で使っているのは初めて見ました。」と伝えますと。
社長さんが
「実は数年前に、従業員が高所から墜落し死亡災害を経験してしまった。
大切な従業員を墜落災害で亡くしては、いけない
二度と災害を起こしてはいけないと強く感じ、安全には妥協しないと決め、
高所作業の多い私たちにとって、安全帯の良い物をと考え、業者に何か良い安全帯を探すよう依頼したのですが、なかなか良い物がありませんでした。
業者の営業マンに『欧米ではフルハーネス型の安全帯を使っているようなので並行輸入で取り寄せてくれ!』と頼んだのですが、『並行輸入するよりも一層のことオリジナルを作りませんか?』と言われ、作成することにしたのです。」
それを聞いた私は、
安全に特化された、業者さんがいることにとても感心しました。
墜落実験
そして、何故フルハーネスなのか疑問を持ちましたので、
「ところで、フルハーネス型安全帯って、何がいいの?」と尋ねますと、
「では、現場で吊るす実験をしましょう。」
「実験?危ないことはダメですよ!」
「大丈夫です。初めてのゼネコンや現場で必ず聞かれるので、いつも実験するので」
「何をするの?」
「先ず、胴ベルト型の安全帯で吊ってみます。その後フルハーネス型安全帯で、
少し高いところから飛び降ります。」
「吊るって?」
「胴ベルト型で飛び降りたりすると、怪我するので。クレーンで安全帯のD環にフックで吊ります。」
「飛び降りたらケガするのですか?大丈夫ですか?」
「まぁやってみましょう」と、いう事で実験開始です。
胴ベルト型安全帯のD環に細いスリングベルトを通し、吊ることに!
鳶さんを吊った瞬間でした
「無理、無理、苦しい!!」直ぐ降ろしました。
「安全帯って、全然安全ではない!」と私は、吃驚してしまいました。
「飛び降りるのは、危ないから止めませんか?怪我でもしたら大変ですよ!」
「何時もやっていますから、大丈夫です。」
胴ベルト型であれだけ痛がるのですから、飛び降りる等で、大怪我でもしたらと心配でしたが、いよいよ飛び降りることに!
何かあってはいけないので、地上にクッションになるものを沢山敷き対応しました。
「では、飛び降ります。」
「絶対に無理しないで下さい。気を付けて!」と声をかけたと同時に、
鳶さんは軽く飛び降りたのです。
「鳶さん大丈夫ですか!!」と、私は怒鳴ってしまいました。
「はい、多少痛いですけれども大丈夫です。」
いくら実験と言っても今考えたら絶対だめですよネ。
二十数年前ですので、お許しください。
吊らされている鳶さんは、多少の痛みがあるようでしたが、大丈夫なようです。
私は、作業員に対し高所作業では、「安全帯を必ず掛けろ!」と指示していたのですが、
「胴ベルト型は、安全ではないのかと?指示をしてはいけなかったのでは!」と
「社長さん、このハーネス型を他の鳶さんの会社に紹介しても構いませんか?」
「いいですよ!」という事で何社かの鳶さんの会社を集めてまた実験をしました。集まった社長さんや安全担当の方々の前で、実験しましたら、
皆さん私と同じ事を感じたようです。
文句の嵐
すっかりフルハーネス型安全帯を気に入ってしまった私は、
「私の現場では、鳶さんは、フルハーネス型安全帯以外は、ダメ!!」
嫌々な鳶さん達に、フルハーネス型安全帯を着装させました。
そうしましたら、
「着装が、大変だ!!」
「一度着けたら、脱ぐのが大変!」
「狭い所だと、背中のD環やランヤードがぶつかって歩きにくい!」等々文句の嵐でした。
毎日、私にクレームを鳶さんたちは言うのですが、一週間たちますと誰も文句を言わなくなりました。不思議に思い彼らに聞いてみますと、
「どうした、あれだけ毎日文句を言っていたのに?」
すると、
「いや~慣れてきたのもあるのですが、腰が楽なのですよ」と答えてきます。
日本人は、とても器用です。腰に沢山の道具をぶら下げたり、腰袋に入れたりと、とても重たい安全帯をしています。私など特に重い安全帯ではありませんが、一日中安全帯を付けて現場にいますと、腰が痛くなります。
それが、腰に負担をかけることなく肩から担ぐタイプのフルハーネス型安全帯を着装して一日中作業される鳶さんたちにとって、とても楽になったのです。
2002年にフルハーネス型安全帯の規格が、法律化され、全国の鳶さんたちはどこへ行っても、フルハーネス型安全帯を着装し、作業を行うようになったのです。
まとめ
私は、フルハーネス特別教育講習時に必ず受講者達に聞きます。
「今日、受講されてる方の中で、墜落したことのある方いますか?」
本日まで私のフルハーネス型安全帯特別教育の講義を受講された方は、
6~7千人以上になります。照れて手を揚げなかった方もいるかと思いますが、4名の方が手を揚げました。
私も四十年間建設業におりますが、勿論墜落したことは、ありません。
高所から墜落された方は、毎年の災害で一番多いのですが、我々の作業の中で、日常的に墜落災害が発生しているかというと、そこまではないのです。
ただし、墜落災害は、発生すれば重篤な災害になってしまいます。
絶対に落ちないなど有りえないので、もし落ちたらフルハーネス型安全帯が
一番身体を守ってくれる、ですから面倒だとかを言わずに着装して下さい。
皆さんの作業を、いつも監視し危険な作業を行ったと同時に注意する人は、
いませんよ!自分の身は自分で守るのですよ。
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一緒に安全作業を楽しみましょう。
安全を好きになって下さい!
2022年2月19日 ブログ管理人:Autumn leaves (紅葉)
『怪我と弁当手前持ち』って知っていますか?
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