- 旧築地市場のアスベスト処理
- アスベスト(石綿)とは
- 建材界のスーパースター
- アスベスト(石綿)による疾病
- 石綿則の改正
- まとめ
旧築地市場のアスベスト処理
東京都では、旧築地市場の解体工事におけるアスベスト処理を平成30年12月から開始し、令和2年5月に旧東市・旧東卸冷蔵庫棟のアスベスト除去及び処理が完了したことにより、平成30年10月から着手した旧築地市場解体工事におけるアスベスト処理が完了したことを報告しています。
旧築地市場の解体対象の全155棟のうち、アスベスト除去対象建物数は87棟で あり、これらのアスベスト処理が完了した。87棟中、アスベストの飛散性が高く、作業場に隔離養生の設置が必要なもの(レベル1及びレベル2の一部(※1)は35棟あり、これらのアスベスト処理が完了した。とも報告しております。(東京都中央卸売市場発表)
※1 アスベスト含有建材の種類及び除去方法(太線内は隔離養生が必要なアスベスト含有建材)

アスベスト(石綿)とは
アスベスト(石綿)は、5000年以上も昔から「火に燃えない」布として利用されてきており、古代エジプトでは、ミイラを包む布として、ギリシャ神殿ではランプの芯として利用されていました。
古代ローマでは、アスベスト繊維を布に織って衣類等に使用し、中国でも火に強いという性質を利用して火で洗える布(火浣布・かかんふ)等に使用されていました。日本で初めてアスベストが発見されたのは、1764年(明和元年)頃、平賀源内が秩父の山中(中津川上流)で発見し、それを使用して火で洗える布(火浣布)の製作に成功しました。(火浣布略説・国立国会図書館)
凄いですね先人達の知恵は!

建材界のスーパースター
アスベストの特性は、不燃・耐熱性、耐薬品性、絶縁性、耐蝕・耐久性、耐摩耗性等に優れ、加工しやすく安価であることから、その特性を利用して断熱材、耐火被覆材、天井材、壁面仕上材等の建材や家電製品、接着剤等の工業製品等、約3,000種を超える多くの用途に使われてきました。まさに建材界のスーパースターがアスベストだったのです。
アスベスト(石綿)の種類は、「蛇紋石族造岩鉱物に属する繊維状けい酸塩鉱物であるクリソタイル及び角閃(せん)石族造岩鉱物に属する繊維状けい酸塩鉱物であるアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クロシドライト、トレモライト、あるいはこれらを一つ以上含む混合物をいう」と定義しています。また、これら6種類のものを石綿(アスベスト)として世界的に規制の対象としています。 クリソタイル(白石綿)は、ほとんどすべての石綿製品の原料として使用されてきた。世界で使われる石綿の9割以上を占めてる。アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)は、吹付け石綿として使用されており、他に青石綿は石綿セメント高圧管、茶石綿は各種断熱に使われていた。アクチノライト、アンソフィライト、トレモライトの3種類は、建材ではほとんど使用されていません。
アスベスト(石綿)による疾病
アスベスト(石綿)による疾病の病理及び症状
アスベストは、目に見えている状態でしたら、何も怖くありません。束がほぐされて、細く肉眼では見えない大きさになり、空気中を浮遊し始めて、吸い込むと危険なのです。
石綿一本の直径0.01~0.1μm1㎜の10万分の1から1万分の1 髪の毛の1/5000すなわち目に見えない石綿が空気中を浮遊し肺の奥深くまで入り込み悪さをするのです。
疾病には、アスベスト(石綿)肺、アスベスト(石綿)肺がん、中皮腫 潜伏期間が10年から50年という長い年月後に発症するのが、アスベスト(石綿)による病気の怖さでもあります。特に中皮腫は、心膜や胸膜、腹膜等にできるとても変わった悪性の腫瘍でアスベスト(石綿)での罹患が高いと言われており、発症しますと5年で殆どの方が亡くなってしまう、まさに不治の病です。そして喫煙者が石綿解体作業等でアスベストに暴露すると、石綿作業も喫煙もしない方との肺がんで死亡するリスクが53.2倍にもなりますので、禁煙を呼び掛けております。
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石綿則の改正
平成17年(2005年)に石綿障害予防規則(石綿則)が制定され、これに基づく措置が事業者等に義務付けられています。しかしながら、石綿則で義務付けられている作業開始前の石綿含有の有無の事前調査など、建築物等の解体・改修工事を行う際に必要な措置が実施されていない事例が散見されたことから、解体・改修工事における石綿ばく露による健康障害を防止するため、令和2年(2020年)7月に石綿則が改正されました。
石綿則の改正ポイント
改正ポイント1 工事前に石綿含有の有無を調べる事前調査について
◆ 建築物の解体・改修・リフォームなどの工事対象となる全ての材料について、石綿(アスベスト)含有の有無を設計図書等の文書と目視で調査するとともに、その調査結果の記録を3年間保存する必要があります。(令和3年(2021年)4月~)
◆ 建築物の事前調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した者等が行う必要があります。(令和5年(2023年)10月~)
改正ポイント2 工事開始前の労働基準監督署への届出について
◆ 吹付石綿に加え石綿(アスベスト)が含まれる保温材などの除去等の工事は14日前までに労働基準監督署に届け出る必要があります。(令和3年(2021年)4月~)
◆ 一定規模以上の建築物や特定の工作物の解体・改修工事は、事前調査の結果等を電子システムで届け出る必要があります。(令和4年(2022年)4月~)
改正ポイント3 吹付石綿・石綿含有保温材等の除去工事について
◆ 除去工事が終わって作業場の隔離を解く前に、資格者が石綿(アスベスト)等の取り残しがないことを確認する必要があります。(令和3年(2021年)4月~)
改正ポイント4 石綿含有成形板等・仕上塗材の除去工事について
◆ 石綿(アスベスト)が含まれているけい酸カルシウム板第1種を切断、破砕等する工事は、作業場を隔離する必要があります。(令和2年(2020年)10月~)
◆ 石綿(アスベスト)が含まれている成形板等の除去工事は、原則切断、破砕等によらない方法で行う必要があります。(令和2年(2020年)10月~)
◆ 石綿(アスベスト)が含まれている仕上塗材をディスクグラインダー等を用いて除去する工事では、作業場を隔離する必要があります。(令和3年(2021年)4月~)
改正ポイント5 写真等による作業の実施状況の記録について
◆ 石綿(アスベスト)が含まれている建築物、工作物又は船舶の解体・改修工事は、作業の実施状況を写真等で記録し、3年間保存する必要があります。(令和3年(2021年)4月~)
改正石綿則の周知・広報事業ポータルサイト – YouTube
ー 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイトより ー
まとめ
石綿(アスベスト)作業従事者特別教育の講習をかなり実施してきました。解体工事業の方、設備業者、塗装業者等沢山の業種の方々が受講されています。いつも言いますが安全の講習は面白くありません、ですから話の内容によっては、眠くなってしまうのですが、この石綿(アスベスト)作業従事者特別教育は、みなさん真剣に聞いています、やはり見えない物の怖さ、直ぐには病気にならないが、もし病気になれば、治らない病気。しかも肺がんや中皮腫のように死亡してしまう怖さを感じていらっしゃるのかもしれません。正しい作業方法や正しい保護具を使用することで病気になるリスクを減らす事を学ばなければいけないと感じているからかもしれません。
私は、受講生たちにいつもこん言い方をします。
「怖さや危険であることを知っている人は、絶対に無理はしません。ですから、私は、みなさんにこの作業をするとこんな危険がある、あの作業するとこんな病気になりやすい。だから怪我や病気にならない措置と保護具は必要なのですよ。保護具をケチらないで下さい、いつも新しい物を使って下さい。正しい作業方法で作業を行ってください。あなたの命は、自分で守りましょう。」
安全を学ぶために大学院に通っていた時、教授が、「築地は建物が古く目に見える石綿が、ボロボロだ、あのままでは危険だ。早く除去しないといけない。働いている人たちが病気になったら大変だよ」と、話していました。築地市場がなくなってしまったのは、とても寂しいのですが、市場で働いていた方々が、病気にならなくて良かったと思います。
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安全を好きになって下さい!
2022年3月21日 ブログ管理人:Autumn leaves (紅葉)
『怪我と弁当手前持ち』って知っていますか?

コメント
大変勉強になります。
これからも、有益なお話しをお聞かせください。
ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
本日は特別教育ありがとうございました。大変勉強になりました。
質問させて頂きたいのですが、
建物外壁の吹付では無い塗装を撤去する際は、湿潤化していれば特に周りをビニールシート等で被う必要は無いのでしょうか?2㎡程度でLV3にて対応予定ですが、多少のケレンはどうしても行います。現状は撤去箇所のビニール養生を行い、養生内に手を入れて湿潤化、撤去を行う予定です。
また戸建て等の解体時にスレート、吹付アリの外壁等を撤去する際も、湿潤化していれば廻りをビニールシート等で被わなくても良いのでしょうか?
アスベストの含有調査を行うためにサンプルを取りますが、1㎡程度の作業予定でも3箇所の検体を取る必要があるのでしょうか?
またサンプルを取った箇所の飛散防止養生はどのような形でするのが良いのでしょうか?
ビニール養生をテープ等で止める程度で良いのでしょうか?もしくは指定があるのでしょうか?
今回の特別教育とは内容が少し違い申し訳ありません。
可能であれば教えて頂ければと思います。
よろしくお願いいたします。
伊東様
コメントを頂きありがとうございます。
オンラインですと、中々お伝えし難く、
ご理解いただけないこともあったかと思いますが、
ご受講いただきありがとうございました。
さて、ご質問に私がわかる限りお答えいたします。
まず、外壁塗装撤去の対応ですが、
近隣との離れなどが分からないので、これでとは言い難いのですが、
広い敷地の中で近隣とも離れていて周りに何もない状態でしたら、
2㎡ほどの撤去でしたら養生をせずに撤去(勿論湿潤は必要)は、可能かと思いますが、
近接して隣家があるのでしたら、ビニール養生を行なっての作業が良いと思います。
以前、公団の改修工事では、塗装撤去を足場にビニールシートの養生と湿潤化で施工しました。
戸建の解体ですが、こちらも近隣の近接があれば当然足場等にビニール養生は、
必要かと思います。
解体レベルによって、作業計画を所轄労基署や役所に報告義務がありますので
伊東様の施工計画を所轄労基署に持参し相談をされると良いと思います。
労基署の担当官によって解釈が多少違いますが、
相談を受けた監督官は、とても親切に指導してくれます。
不安や、分からないことがある場合は、労基署に相談するのが
一番良いと思います。何故かと言いますと、
監督官から指導を受けたものに関して、
他の監督官は、その対応はダメとは言いません。
私自身、法の解釈や労災対応では、必ず相談に行きます。
例えば指摘があっても、◯◯さんからの指導ですと言いますと、
何も言われません。労基署をうまく利用して下さい。
あまり危うい事を計画しますと、藪蛇になりますのでご注意下さい。
サンプル採取後の養生は、ビニール養生とテープ留めで大丈夫だと思いますが、
サンプル採取などは、専門業者に依頼するのが一番です。
私の答えが絶対とは、言えませんが(解体場所等の確認をしておりませんので)
気軽に労基署にこれこれの対応で良いかと相談してみて下さい。
状況が分からず、あまり良い答えでは、ありませんが
以上になります。
アスベスト以外でも、ご質問等ありましたら、
いつでも相談して下さい。
私自身で答えられないときは、他の講師や大学の教授等に
確認を取りますので、お気軽にお声掛け下さい。
本日は、ご受講いただきありがとう御座いました。
今後も宜しくお願いいたします。
Autumn leaves
ごめんなさい。
1m2でのサンプル採集は1箇所で大丈夫ですが、
もしアスベストがあるのが分かっているのであれば、
みなしで有るとして計画した方が、無駄にならないと思いますよ!
お忙しい中返信ありがとうございます。
大変参考になりました。これからは労基署にも色々お伺いしてみようと思います。
また特別教育等を受講しますので、その際はよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
伊東様
少しはお役に立てましたか?
今後も何か質問や疑問がありましたら、
ご連絡ください。
また、講習に関しましては、
10名以上、集まりましたら、
出張しての講習も出来ますので、
お声掛け下さい。
宜しくお願いいたします。